1 とりあえずたき火から
空き缶を拾ってきて、一つには底に穴をあける。もう一つは穴なし。これでたき火をして燃え方の違いを見る。
空き缶のサイズは、トマトの水煮缶サイズ。なぜかラベルが紙で、はがしてしまうと無印の空き缶になるところが好印象。多分、輸出先にあわせて巻く紙を変える方が安くつくから印刷じゃぁないんだろう。
たくさん拾ってきたもんで、一人1セット置いてある。新聞紙と割りばしで空き缶内で燃やしてみる。
うまく燃やした時はこんな色になって戻ってくる。授業にあたっては子どもたちにたき火の経験がない、と思って臨むことだ。
2 底なし集気びんと、油粘土で
油粘土は、底からの吸気をコントロールしやすい。筆箱に入っている定規などで切り取りやすいからだ。ただ、使った後、油粘土にロウがめり込んで塊になる。それを取って、平らに伸ばして次のクラスに備えなくてはならない。
そこで、銅板を叩いて皿状にして釘を刺し、油粘土用のろうそく立てを製作しておいた。
3 “酸素は燃える”という誤解
酸素の中でろうそくを燃やすと勢いよく燃える。これを見て“酸素は燃える”と誤解する子が多い。“酸素の中ではよく燃える”が良いのだが。
燃え終わった後の空気には酸素がまだ含まれている。酸素が薄くなると燃え続けることが出来ないというのがホントのところだ。
そこで、燃える気体であるブタンガス、水素、と酸素のボンベを用意し、洗剤を入れたビーカーに吹き込んで、表面の泡に火をつけてみる。
ブタンガスは、メラッと燃える(中)。水素は激しくてパチンと音を立てるだけ(右)で、デジカメでの撮影は無理なので動画で撮ってみると4分の1秒ほどで燃焼が終わっていた。酸素の泡は燃えず、マッチの炎が大きくなるだけだ。
従来水素を使った実験では事故がよく起きていた。大きな容器を使い、水面を高くしておくと安全に燃やすことができる。
これで、酸素には“助燃性”があるだけで、酸素自身は燃えない、と押さえることができる。この誤解は、酸化という反応を将来学習する時の障害となるのではないだろうか。
4 “二酸化炭素は火を消す”という誤解
二酸化炭素の中にろうそくを入れると、瞬時に火が消える。このことから“二酸化炭素は火を消す働きがある”と考えやすい。火を消すのではなく、酸素がないから燃え続けられないという考えに結び付きにくいのだ。
試しに、“酸素が半分、二酸化炭素が半分”の気体を集気びんに作って、「強烈に濃い二酸化炭素だが燃えることが出来るだろうか」と実験してみると良い。酸素が空気の倍ほどあるので強烈に燃える。
追いかけて、窒素100%で同じことをやってみると、二酸化炭素と同じように瞬時に火が消える。
これは、酸素の助燃性を補強する実験になる。
5 窒素って、何なん?
窒素は、おだやかな元素で、そのことから生活で役に立っている。
ベーコンの包装は、空気が入らぬようにピタッとしているものが多いのに、このウインナーの包装、なぜか中味は数個しか入っていないのに無駄に膨らませてある。同じようなのがポテトチップスの包装もそう。
また、個包装の生菓子などには脱酸素剤が入れてあることが多い。この正体はほぼ使い捨てカイロと同じだ。熱は出るが酸素を消費するので、日持ちさせるために入れている。これによって包装内は悪さをしない窒素がほとんどになる。
油で揚げたポテトチップスなどは、酸素が食品の品質・風味を落とすので、酸素を追い出すために窒素を充てんしているのだ。「不活性ガス充填」と書かれていることが多いがその正体は窒素だ。
窒素は、農業に欠かせない肥料の3要素のひとつ。これがないと有機物が生成されないと言っても良いだろう。窒素をふくむ尿素は無機化合物から作られる有機化合物の一つで、窒素肥料の代表だ。
窒素が無ければ、地球上に生物は存在出来なかったのではないだろうか。
6 水上置換のスキル
水上置換で気体を集める作業がとても多い。集気びんと試験管を人数分にして個人実験になるようにしているので、各自のスキルが高まっていく。
最初は気体を漏らしてしまったり、空中に取り出してから蓋をしたりと失敗も多い。
他に、上方置換、下方置換という方法があって、水にとけにくい気体は水上置換を使う、ってことぐらいは知っていても良いと思う。
7 空気の正体は
空気は78%が窒素、21%が酸素、そして、二酸化炭素は0.04%だ。ふれる必要はないが、その他としている多くはアルゴン。
ウチで使っているCO2チェッカーは、起動するとその場の空気を、21%と0.04%にその都度キャリブレーションをする仕組みのようだ。